今回は利益処分の方法について解説します。
この利益処分については簿記の中では数少ない、暗記が必要になる部分です。

なんで?

法律で決まっているからです。
内容を理解するのは非常に難しいので、暗記したほうが早いです。
・株式の発行の方法
・配当の処理
・利益準備金の計算方法
株式会社の仕組み
会社の種類には大きく株式会社と株式会社以外の会社に分けられます。

株式会社以外の会社の会社で有名なのはアマゾン・ジャパンですね。

アマゾン・ジャパンは株式会社じゃないんだ。

そうです。アマゾン・ジャパンは合同会社です。
ここでは説明はしませんが、株式会社以外にもいろいろあるという理解でOKです。
株式会社とは多数の者から出資を集めて大規模な事業を営むことを想定した会社です。

この出資者である株主は実質的な会社の所有者でありますが、経営のプロではありません。
そこで、合理的な経営を実現するため、会社の所有者である株主と経営のプロである経営者の役割を分割しています。
そして経営のプロである株主は株主からの出資を運用することによって毎年の経営の成果である利益を株主に還元を行います。

これが配当です。

なるほど、より多くの利益を稼ぎ出し、より多くの配当を株主に還元するのが経営者の仕事なんだね。
そうですが最近はこれまでの利益至上主義に対してCSRやESGが重視されています。

興味のある方は、ググってみてください。
株主総会と取締役会

経営のプロである経営者は取締役という役職に付くのが通常です。この取締役は取締役会によって会社の経営方針を決定します。
一方、株主からなる株主総会は会社の根本的な決定や利益の配当について決めます。
設立した場合の処理

設立した場合の処理は3級でも紹介しました。
✓3級の内容
原則:株式を発行した場合は払込金額全額を資本金(純資産)として処理します。
✓2級の内容
容認:払込金額のうち、最低2分の1を資本金として処理します。なお、資本金に計上しなかった額は資本準備金(純資産)として処理します。
これは「会社法」で規定されている内容です。

※試験では、「払込金額のうち、「会社法」で認められている最低額を資本金とする」という指示がつくと考えられます。
(当座預金)1,000 (資 本 金)500
(資本準備金)500
ポイント
原則…払込金額全額を資本金として処理
容認…払込金額のうち、最低2分の1を資本金として処理し、残額は額は資本準備金(純資産)として処理。
増資した場合の処理

1、申込証拠金の受取時の仕訳
会社設立後に新株を発行して資本金を増やすことを増資といいます。
増資をするときに一定期間(申し込み機関)を設けて株主を募集します。
しかし、すべての申込者に株式を割り当てるとは限りません。

そんなことあんの?

はい、50株分の募集をしたのに、80株分の応募があれば30株分は割り当てられません。
そのため、株式の発行が行われる前に申込者から受け取った払込金額(申込証拠金といいます)は資本金としないで、株式申込証拠金(純資産)で処理します。

また、申込者から株式申込証拠金として払い込まれた現金や預金は会社の他の現金や預金を区別するため、別段預金(資産)で処理します。
(別段預金)1,000(株式証拠金)1,000
2、払込期日の仕訳
払込期日において、株式申込証拠金を資本金とするとともに、別段預金を当座預金に預け替えます。
(申込証拠金)1,000(資 本 金)500
(資本準備金)500
(当座預金)1,000(別段預金)1,000
株式発行にかかる費用

株式を発行する際に株主募集に係る費用や証券会社への手数料など費用が掛ります。
このように、株式発行にかかる費用は株式交付費(費用)として処理します。
(当座預金)1,000(資本金)1,000
(株式交付費)100(現 金)100
創立費・開業費について

会社の設立にかかる費用は以下のものがあります
・開業費(会社の成立後、営業開始までに支出した開業準備の費用。例えば賃借料人件費等)

これらは繰延資産として紹介しましたが、償却の方法は問題文に従ってください。
剰余金の配当・処分

当期純利益を計上した時の処理は3級と同じです。以下のページを参照してください。
剰余金の配当・処分
株式会社は出資者である株主のものです。
株式会社が稼いだ利益は株主総会で株主が決めます。このように配当を含めた利益の使い道を決めることを「剰余金の配当と処分」といいます。
剰余金処分の中身
剰余金の処分は配当以外の剰余金の使い道をいいます。具体的には利益準備金(純資産)や任意積立金(純資産)があります。
剰余金の配当と処分の仕訳
株主総会で剰余金の処分・配当が決まったときは繰越利益剰余金を振り替えます。
配当金に関しましては後日に支払われるため「未払配当金」(負債)に振り替えられます。
株主配当100円、利益準備金10円、別途積立金50円
(繰越利益剰余金)160(未払配当)100 ⇐負 債
(利益準備金)10 ⇐純資産
(別途積立金)50 ⇐純資産
(未払配当金)100(当座預金)100
利益準備金の計算
会社の利益は株主のものであり、その使い道は株主が決められます。
しかしそのすべてを株主に配当してしまっては、次期以降に会社が投資するための資金が残っておらず、成長が出来なくなります。
そのため、会社法の規定により配当の限度額は決められております。
具体的計算式

これを覚えるの?

はい。覚えてください。ここは簿記では数少ない暗記項目です。法律で決まっている以上仕方ないですね。
株主配当金 2,000円 利益準備金?円 別途積立金500円
なお、当社の資本金は8,000円、資本準備金1,000円、利益準備金は500円であった。
(繰越利益準備金)2,600(未払配当金)2,000
(利益準備金)100
(別途積立金)500
計算式
①8,000(資本金)×1/4ー(1,000(資本準備金)+500(利益準備金))=500
②1,000(株主配当金)×1/10=100
①>②なので②の100円が利益準備金になる。
まとめ
原則…払込金額全額を資本金として処理
容認…払込金額のうち、最低2分の1を資本金として処理し、残額は額は資本準備金(純資産)として処理。
・株式申込証拠金は別段預金(資産)で処理
・開業費(会社の成立後、営業開始までに支出した開業準備の費用。例えば賃借料人件費等)
配当金は支払われるまでは「未払配当金」(負債)で処理。
剰余金の処分は「繰越利益剰余金」の処分で処理

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