皆さんは経済ニュースでこんなニュースをよく見ませんか?
【図解】国の借金、1200兆円突破=1人983万円―昨年末
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ac70389ed3f17122dc97843e3458e3a696d92a7
このニュースを素直にみれば我々国民は一人あたり1,000万円借金を背負っております。

借金であれば、我々国民は1,000万円の借金を返済する必要があるの?
しかし、我々簿記を学んだ人間であれば、

借金が1,200兆円があるのは分かった。じゃあ、国の資産はいくらあるの?
という発想に行きつきます。
借金が1,200兆円かもしれないが、では資産とのバランスはどうなのでしょうか?
今回は国の財務諸表、主に貸借対照表について皆さんと見ていきたいと思います。
ただ私自身「財政」に関しては素人ですので、不備等はあるかもしれませんがご容赦願いします。
日本国の財務諸表は?

日本国の財務諸表は以下の財務省のページから見られます。
https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/index.htm
この中の国の財務諸表を簡単にまとめたものが以下のBSです。

国の借金が1,200兆円って話だけど1,200兆円っていうのは負債総額じゃないの?

そうです!
この中で借金といえるのは「公債」「借入金」「政府短期証券」ですね。
それでも借金は100兆円以上はありますね。

あと、純資産がないね。

私も国の財務諸表は初めて見ましたが、国には出資者という概念がないので、純資産はないのでしょう。
ポイントは「公債」

このBSの負債で大きなウェイトをしめる「公債」ですが、簡単に言うと「国債」ですね。
国債については我々も金融機関等で購入することが出来ます。
簿記的な理解では「満期保有目的証券」として処理し、期末ごとに償還する会計処理を紹介しました。
https://bkforworkers.com/1555/
ではこの「国債」ですが最大の保有者は誰なのでしょうか?
それは「日本銀行」です。

なぜ「日本銀行」がそんなに国債をもってるの?

わたしもこの範囲のプロではないので興味を持たれたらご自身で調べてみてください。
「日銀」のBS

では日銀のBSを見てみましょう。
日銀のBSは以下のページから詳細が見られます。
https://www.boj.or.jp/about/account/index.htm/
これを見ると日銀は国債を500兆円近く保有しています。
これは政府発行の国際半分近くが日銀が保有していることになります。
ここで問題になるのが政府と日銀の関係性です。

??
どうゆうこと?

政府と日銀が親子関係に該当するか否かです。
仮に政府と日銀が親子関係になるのであれば連結会計が適用できます。
ということで政府と日銀の関係性を見てみましょう。
政府と日銀の関係性

日銀の純資産の内訳

日銀には資本金があるね。

この内訳も見てみましょう。
個人株主が多いですが、ただし議決権のある株式は政府のみが保有います。
つまり、個人株主は議決権はなく配当のみの株式ということです。

ちなみに、配当利回りは毎年5%のようです。
議決権を有する株主は政府のみ!
これがどういう意味をもつのでしょうか?
以下の連結会計基準をみてみましょう。
6 「親会社」とは、他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会そ の他これに準ずる機関をいう。以下「意思決定機関」という。)を支配している企業をい い、「子会社」とは、当該他の企業をいう。
7 「他の企業の意思決定機関を支配している企業」とは、次の企業をいう。ただし、財務 上又は営業上若しくは事業上の関係からみて他の企業の意思決定機関を支配していないこ とが明らかであると認められる企業は、この限りでない。
(1) 他の企業 の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業
13 親会社は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含める。
政府が企業に該当するかは疑問がありますが、この基準を考慮すれば政府は日銀を支配しているとなり連結の必要性が生じます。
ちなみに、政府は連結財務諸表を作成していますが、ここに日銀は含まれていません。
そこで、政府と日銀の連結BSを作ってみましょう。
私が作ってみた連結BSは以下の様になりました。
連結BSはこれだ!


負債の預金が大きいね。

これは金融機関と日銀が取引を行う際に準備預金として預け入れている金額になります。
この預金についてはマイナス金利が適用されるということで一時期ニュースにもなりました。
以下のページを参照してください。
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b37.htm/
ちなみに相殺した内容は分かる限りですが以下の内容になります。
この連結BSを見る限り国の借金と言われるものは「政府短期証券」・「公債」・「借入金」の3つで合計600兆円ぐらいです。

ニュースの見出しの半分になったね。
他に、負債の「銀行発行券」ですが、これに関しては利子・償還がないという返済義務を負わないものです。
厳密に負債の定義に照らして考えれば負債に該当しないと考えられますね。
負債とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源を放棄もし くは引き渡す義務、またはその同等物をいう(概念フレームワークより)

とすればむしろ純資産にいれるべきではなのかと思います。
では仮に、銀行発行券を加味した場合我々はどのようにこの連結BSを評価すべきでしょうか?
日本の価値は?

銀行発行券を純資産に加味した連結BSは以下の様になります。
この連結BSを見ると日本政府の資産は約780兆円・負債は約1,250兆円です。
ちなみに、経済学者の高橋洋一氏によると
「先進国と比較して、日本政府のバランスシートの特徴を言えば、政府資産が巨額なことだ。政府資産額としては世界一である。政府資産の中身についても、比較的換金可能な金融資産の割合がきわめて大きいのが特徴的だ。」
これを考慮すると
✓資産負債差額の-450兆円
これらを日本の価値として評価すべきなのでしょうか?
ここでは企業評価に使うファイナンス理論を使って評価してみたいと思います。
この場合、企業が将来生み出す将来キャッシュフローを使用することによって企業の価値を評価します。
政府にとって企業の将来キャッシュフローに該当するものは何でしょう?
いろいろあると思いますが、政府は「徴税権」を有しています。
この「徴税権」をファイナンスの方法によって評価すると約600兆円から1,000兆円の価値を有するそうです。

この内容についてどのように判断するかは皆様次第です。
最後に

今回の内容を通して私ははなにも国の財政に対して皆様に楽天的になってほしいわけではありません。
ニュースの内容を鵜呑みにして日々の生活を憂鬱に過ごしていただきたくないという思いから今回の記事を書きました。
特に「景気の気は気分の気」という言葉もあります。皆さんが毎日を憂鬱に過ごしていれば日本景気も憂鬱になります。
日本には数字に出来ない素晴らしい部分も多く存在します。
気分を上向きにして景気も上向きにして行きたいという思いで今回の記事を書きました。
そのためには日本の現状をしっかり認識する必要があります。今回の記事がその一助になればと思います。

そもそも国の借金が国民の借金なら、会社の借金は従業員の借金なのか?という疑問がありますが、これを言ってしまうと元も子もないですね。
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