今回はリースの解説をしますが、導入の内容については以下の2級を参照してください。

https://bkforworkers.com/1808/
簿記1級のリース取引で重要なのはリース取引の判定です。
この判定で手を抜くと痛い目を見てしまいますよ!

実際私もリース取引の判定で手を抜いてしまった結果、痛い目を何度も見てしまいました。
皆さんはリース取引の判定をしっかりして私と同じような痛い目を見ないようにしましょう!
ファイナンス・リースとオペレーティングリースの違い


2級ではファイナンスリース、オペレーティングリースについて判別されていましたが、1級では自身で判別する必要があります。
①ファイナンス・リースの判定基準
ファイナンス・リースについては以前フルペイアウト・ノンキャンセラブルの2つの要件を紹介しました。


しかし、これらの契約内容に加えて実は経済的実態にもとづいて判断する必要があります。
以下の内容に該当する場合はファイナンス・リースに該当します。
(1)現在価値基準(原則法)
解約不可能なリース契約中のリース料総額の現在価値基準が、当該リース物件を借手が現金で購入する場合の合理的見積金額(見積現金購入価額)のおおむね90%以上であること。
(2)経済的耐用年数(簡便法)
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数のおおむね75%以上であること。
②リース料総額の現在価値の算定方法
(1)リース料総額の現在価値
毎年支払うリース料をS、割引率をr%とした場合、その現在価値を以下の様に表すことができます。
リース料総額=S÷(1+r)% + S÷(1+r)%^2 + S÷(1+r)%^3 + …


つまり将来払うリース料総額の現在価値の割引計算を行います。
このリース料総額の現在価値≧見積現金購入価額×90%の場合、現在価値基準を満たすことになります。
(2)年金現価係数
年金現価係数とは毎年支払うリース料に対して掛けるとリース料総額が求められる係数のことを言います。
リース料総額=リース料×年金現価係数
(3)割引率
リース料総額の現在価値を算定するために用いる割引率は以下のものを用います。
リース料総額の現在価値を算定するために用いる割引率
①貸手の計算利子率を知りえる場合は貸手の計算利子率
②貸手の計算利子率を知りえない場合は借手の追加借入に適用される利子率と合理的に見積もられる利率
③所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンスリース
ファイナンスリースは以下のいずれかに該当した場合には、所有権移転ファイナンスリースとされ、該当しない場合は所有権移転外ファイナンスリースになります。
(1)所有権移転条項リース
リース契約上、リース期間終了後またはリース期間中リース物件の所有権が借手に移転する内容が存在するリース取引
(2)割安購入選択権条項付リース
リース契約上、借手に対して割安購入選択権が与えられており、その行使が確実に予想される場合のリース取引
※割安購入選択権…リース契約上、リース期間終了後またはリース期間中リース物件に比して著しく有利な価格で買い取る権利
(3)特別仕様のリース物件
リース物件が借手の用途に合わせて特別の使用により制作・建設され、リース物件の返還後貸手が再びリース・売却することが困難であり、当該借手のみに利用されることが明らかなリース取引


ファイナンス・リース取引の判定は以下のフローでまとめました。
④現在価値基準の判定における注意点
(1)維持管理費相当額の取り扱い
借手が負担するリース料の中には通常リース物件の維持管理にともなう諸費用(以下、この費用を「維持管理費相当額」という)については現在価値基準の判定にあたっては維持管理費相当をリース料総額から控除するのが原則です。
(2)残価保証の取り扱い
リース契約終了時にリース物件の処分価額が契約上取り決められた保証価額に見たない場合は借手はその不足価額を支払い義務を負う契約がある。(以下、この契約を「残価保証」という)リース契約上、残価保証の取り決めがある場合はリース料総額に含める。
(3)現在価値基準で90%を大きく下回る場合
現在価値基準でリース料総額の現在価値が現金見積購入価額の90%を大きく下回る場合、経済的耐用年数を満たしたとしても、オペレーティング・リースとして判定する。


(3)に関しては問題文に指示がつきます。
【資料】
1,いずれの取引も実質的に解約不能である。
2,いずれの取引も所有権移転条項、割安購入選択権条項、残価保証は付されていない。
3,当社は貸手の利子率を知りえず、当社の追加借入利子利率は5%である。
4,備品Aは特別仕様になっており、返還後再リース。売却は困難である。
5,備品Cは現在価値基準を大きく下回っている。
解答
備品A:所有権移転ファイナンス・リース取引
備品B:所有権移転外ファイナンス・リース取引
備品C:オペレーティング・リース取引
備品D:オペレーティング・リース取引
解説
備品A
(1)現在価値基準
※50,000÷(1+5%)+50,000÷(1+5%)^2+50,000÷(1+5%)^3+50,000÷(1+5%)^4+50,000+(1+5%)^5≒216,474


電卓の使い方に注意しましょう。
これを真面目に計算すると間違いのもとです。
電卓での計算方法は以下の通りです。


実際の電卓たたき方は下のようにしましょう。


最初のM+は1年後のリース料、2回目のM+は2年後のリース料を電卓に記憶させています。このようにして、計算ミスを無くしましょう。


計算ミスをなくすのは電卓の使い方が重要だね。
詳しい使い方は以下のページを参照してください。


(2)経済的耐用年数
(3)判定
①リース料総額の現在価値基準が見積り現金購入価額の90%以上であるため
②リース期間が経済的耐用年数の75%未満であっても特別使用であるため所有権移転ファイナンスリースとなる。
備品B
(1)現在価値基準
40,000÷(1+5%)+40,000÷(1+5%)^2+40,000÷(1+5%)^3≒108,930
(2)経済的耐用年数
(3)判定
①リース料総額の現在価値が現金見積購入価額の90%未満であるが、
②リース期間が経済的耐用年数の75%以上であるため、ファイナンス・リース取引に該当する。
また、所有権移転条項、割安購入選択権条項、特別仕様でもないため、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。
備品C
(1)現在価値基準
600,000÷(1+5%)+600,000÷(1+5%)^2+600,000÷(1+5%)^3+600,000÷(1+5%)^4≒212,757
(2)経済的耐用年数
(3)判定
備品D
(1)現在価値基準
30,000÷(1+5%)+30,000÷(1+5%)^2≒55,782
(2)経済的耐用年数
(3)判定
まとめ


リース取引の判定結果によって会計処理が変わってきます。
処理方法は次回以降紹介します。


リース取引について思い込むで解くのは厳禁ですね。


私もそれで何度か痛い目をみました。
皆さんは気を付けましょう!!
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