【簿記1級】「買入償還」はちゃんと解けますか?実は社債にはテクニックがあります!対策はちゃんとしましょう!

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前回は社債の内容を解説しました。


https://bkforworkers.com/3659/


試験で社債が出題される場合は社債利息の仕訳が聞かれるのみでしょうか?


問題として出題される場合は「買入償還」がセットで出されるのがほとんどです。


買入償還のマスターは必須です!


その一方で、社債の利息法は計算方法がややこしく苦手な方がいるのではないでしょうか?


実は利息法の計算方法には簡単に解けるテクニックが存在します。


今回はそのテクニックも紹介します。


目次

買入償還

たくさん買い物をする家族のイラスト(東南アジア人)


買入償還とは社債を発行した会社が、満期を迎えることなく社債を買い入れることを買入償還といいます。


 

タカ
タカ

買入償還は証券市場から買入を行うため、通常償還には損益が生じることになります。


償還の損益は「社債償還益」または「社債償還損」で処理します。


例 題

例 以下の資料に基づき①利息法、②定額法によって×2年6月30日の仕訳を示しなさい。なお、当社は暦年決算である。また、円未満は四捨五入すること。

【資料】
①×1年1月1日以下の条件で額面500,000円の社債を発行し、払込を受けた。
発行価格   額面1口100円につき95.67円
クーポン利率 年4%
実効利率   年5%
利払日    年1回 12月31日
償還期限   5年

②×2年6月30日に発行した社債すべてを484,500円で買入れ、端数利息とともに小切手を振り出して支払い、社債を償却した。


解説

1,利息法の計算


①償却原価の計算

償却原価の計算


社債の発行価額:額面500,000÷100円×@95.67=478,350


②×2年6月30日の社債利息の計算


実効利息:24,113×6月/12月≒12,057
約定利息:20,000×6月/12月=10,000
償却額 :4,113×6月/12月≒2,057


社債利息の仕訳


③償還の仕訳

償還の仕訳

※1 期首簿価482,268+当期償却額2,057=484,325
※2 差額


解答


タカ
タカ

×2年6月30日の仕訳を聞かれているので②+③の仕訳が解答になります


解答の仕訳


2,定額法の計算


②償却原価の計算

(額面500,000-発行価額478,350)÷5年=4,330円/年(1年間の償却額)
×1年12月13日の社債の帳簿価額:478,350+4,330=482,680
×2年6月30日の社債の帳簿価額:482,680+2,165※=484,845

※4,330÷2=2,165(半年分の償却額)


③×2年6月30日の社債利息の仕訳

社債利息の仕訳


④償還の仕訳

償還の仕訳


社債のタイムテーブル

社債のタイムテーブル


タカ
タカ

定額法の場合はタイムテーブルを書くことをお勧めします。


抽選償還

■


抽選償還は社債の一定期間据え置いた後、抽選によって一定期間ごとに一定額ずつ分割償還することをいいます。


償却原価法は原則として利息法になります。


例 題

以下の資料に従い各問の仕訳を示しなさい。なお、当社は暦年決算である。また計算の結果円未満の金額が生じた場合には円みまんすぉ四捨五入をすること。

【資料】

①×1年1月1日に以下の条件で額面500,000円の社債を発行し、払込を受けた。
発行価額 額面1,000円につき973.18円
クーポン利息 年4%
実効利率   年5%
利払日    年1回 12月31日
償還期限   5年 ただし毎年12月31日に100,000円ずつ抽選償還を行う

②×1年12月31日にクーポン利息が当座預金から支払われた。

③×1年12月31日に社債100,000円を小切手を支払って定時償還をおこなった。

④×1年12月31日、本日決算を迎えた。

⑤×2年12月31日にクーポン利息が当座預金から支払われた。

⑥×2年12月31日、本日決算を迎えた。


解答

解答


解説

1,社債の発行

額面500,000÷1,000×@973.18=486,590


2,利息の計算


チェックポイント

毎年100,000円ずつ償還を行うため毎年額面が変化します。
つまり,額面×4%でもとめる約定利率が変化することが重要です。


一段上の問題に挑戦!

ボクシングをする会社員のイラスト(女性)
例 題

当期(自×1年1月1日 至×1年12月31日)に下記の資料に基づき①貸借対照表および②損益計算書を完成させなさい。

【資料1】決算整理前残高試算表(一部)


1,社債は額面200,000円を×0年7月1日に以下の条件で発行した。
発行価額   額面1口1,000円について977.7円
クーポン利息 年2.4%
実効利子率  年3%
利払日    年1回 6月30日
償還期限   4年

2,×1年6月30日に額面100,000円分の当社発行の社債を1口983.05円で買入償還をしたが、償還にかかる費用を仮払金勘定で処理した。なお、償還に伴う損益は経常損益とする。

3,×1年6月30日にクーポン利息を小切手を振り出して支払ったが、償却原価法の適用は未処理である。


解答

解答


解説

①償却原価の計算

償却原価の計算


タカ
タカ

年度末と利払い日は半年ごとに来ますので、1/2をかけて計算すると計算しやすいですよ。


②買入償還

買入社債の簿価

(195,540+1,066)×100,000÷200,000=98,303

仕訳

買入償還

タイムテーブル

タイムテーブル



タカ
タカ

当期の6月末までは200,000円分の社債利息を7月から12月末までは100,000円分の社債利息を計算することに気を付けましょう。
また、試算表に計上済の数字にも気を付けましょう。

未処理の処理

×1年6月30日          

×1年6月30日の仕訳


※1,066(上記タイムテーブル参照)×6月/12月=533


×1年12月31日

×1年12月31日の仕訳

※1 98,303×3%×当期6月/12月≒1,475
※2 残存社債100,000×2.4%×見越6月/12月=1,200


BS

未払費用⇒未払利息1,200
社債⇒98,582

PL

社債利息⇒2,400+533+275+1200=4408
社債償還損⇒仕訳より2


社債のテクニック

手術室看護師のイラスト


社債は今まで様々な計算方法や仕訳を紹介しましたが、社債にはテクニックが存在します。



タカ
タカ

このテクニックを使用して効率よく問題を解きましょう。


ポイント
     以下で紹介するテクニックは「定額法」でのみ使えるテクニックです。



では例題を通じて解説します。


テクニック紹介します!

人を紹介をするビジネスマンのイラスト(男性)


例 題

以下の資料に基づき償却原価法を定額法によった場合の買入償還に掛る損益の額を答えよ。

【資料】

1,×0年8月1日以下の条件で額面3,000,000円の社債を発行し払込を受けた。
発行価額 額面100円につき97円
クーポン利息 年6%
利払日 年2回1月31日、7月31日
償還期限 8年

2,×1年11月30日に発行した社債額面1,000,000円を額面100円あたり98円で買入れ、端数利息とともに小切手を支払社債を償却した。



タカ
タカ

社債テクニックで最も重要なことは「償却率」を求めることです。



償却率の計算とは?

数学者のイラスト


「償却率」とは社債を1年間に償却する割合です。


ニャット
ニャット

そのままだね。


タカ
タカ

これが計算できると社債の計算はらくになります。
以下の方法で計算できます。


償却率



※ 社債発行差額=額面-払込価額


チェックポイント

  ポイントは「延べ社債利用高」です。予定社債利用額(額面)×利用年数」で求められます。


上記の問題で償却率を計算すると以下のようになります。



※3,000,000-(3,000,000÷100×97)=90,000

これが計算できると社債は瞬殺問題になります。


上記の問題での償却率の計算

・×0年8月1日から×1年7月31日までの償却額:
3,000,000×0.00375×12月/12月=11,250

・×1年7月31日から×1年11月30日までの償却額:
3,000,000×0.00375×4月/12月=3,750


タカ
タカ

社債の利用月を間違えないようにしましょう。

また以下の式から償却率の16倍がクーポン率であることがわかります。


クーポン率6%÷0.00375=16


よってクーポン利息は以下のようになります。



×0年8月1日から×1年7月31日までのクーポン利息    :11,250×16=180,000
×1年7月31日から×1年11月30日までのクーポン利息:3,750×16=60,000


タカ
タカ

これは以下の計算式と一致します。


・額面3,000,000×6%×12月/12月=180,000
・額面3,000,000×6%×4月/12月=60,000


ニャット
ニャット

計算方法自体は自身で選んでください。
また、償却率とクーポン利息は割り切れない場合の問題もあります。



タカ
タカ

その場合は分数で計算するか、素直に額面に利息をかけて計算しましょう。


償却率が計算できると買入償還も一瞬で解けます!


足の早いウサギのイラスト


以上の式で償却額が計算できるので、買入償還を行う日の社債の簿価は簡単に計算できます。


3,000,000×0.97+11,250+3,750=2,925,000
2,925,000÷3※=975,000(買入償還の簿価)
(※買入額が券面総額3,000,000円に対して1,000,000円なので3で割っています。)



クーポン利息 3,000,000×6%×4月/12月÷3=20,000
(または3,000,000×0.00375×4月/12月×16÷3)



タイムテーブルはしっかり書こう!

作文を書く子供のイラスト(女の子)



タカ
タカ

社債の問題では以下のタイムテーブルは必須です。


タイムテーブル


償還損益の計算し方は「償還簿価+利息-購入価額」です。間違えないように!


ただしこれはこの問題が「端数利息とともに小切手を支払社債を償却した」とあるためです。

償還と利息の支払が別に行われた場合」は利息は不要です。


よって答えは (償還益 15,000) になります。


仕訳は以下のようになります

解答の仕訳



続いてもう一問練習しましょう!

「もう一杯」のイラスト文字(牛乳)


例 題

例 以下の資料に基づいて×1年6月30日の仕訳を示しなさい。なお当社は暦年決算による。

【資料】
×0年1月1日以下のような社債を発行し払込金額を預金口座に預けた。
額面総額 10,000,000円
発行価額 8,714,800円
クーポン利息 年3%
利払日 年1回12月31日
償還期限 3年
償却方法 定額法

×1年6月30日 上記社債全額を9,400,000円にて市場から購入し償還を預金口座より行った。またクーポン利息については小切手を振り出して支払った。


償却率
(10,000,000-8,714,800)÷(10,000,000×3年間)=0.04284


タイムテーブル

タイムテーブル


6月30日に必要な仕訳

①償却
②クーポン利息
③償還


仕訳

①の仕訳

①の仕訳

②の仕訳

②の仕訳

③の仕訳

③の仕訳


※1 10,000,000×3%×6月/12月


タカ
タカ

今回は社債の償還とクーポン利息の支払は別取引なので利息は償還損益の計算に反映させません。


ニャット
ニャット

で、利息法の計算は?

タカ
タカ

残念ながら利息法は手抜きできません。
まじめに計算しましょう。

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