前回までは税効果会計の根本となる重要論点を解説しました。
https://bkforworkers.com/4114/
今回は前回に比べると細かい内容になります。
しかし、この細かい論点が後の連結会計につながっていきます。

ですので、今回の内容も超重要です。
しっかり理解していきましょう
一時差異に準ずる差異

1,税務上の繰越欠損金の意義
税務上の欠損金は課税所得がマイナスとなる場合をさしますが、この欠損金は時期以降も繰り越されます。
これを「繰越欠損金」といいます。
ただし、この繰越欠損金は繰越期限が決まっています。

この期限は税法により決まっています。現在は10年間となっています。
下記の表を参考に具体的に説明します。

繰越欠損金がある場合はマイナス(欠損金)を繰り越しているのがわかるね。

そうですね。欠損金を出した次年度はその分税金の負担が軽減されるのがわかります。これが会計上どのような効果をもたらすのか以下で解説します。
2,税務上の繰越欠損金の効果と税効果会計の適用
(1)税務上の繰越欠損金の効果
税務上の繰越欠損金は、繰越期限が到来するまで課税所得の金額を減算することができます。
つまり、将来減算差異と同様の税効果を有するため税務上の繰越欠損金は一時差異に準じるものとして取り扱います。
(2)仕訳方法
繰越欠損金発生時
(繰延税金資産)×××(法人税等調整額)×××
将来課税所得発生時
(法人税等調整額)×××(繰延税金資産)×××
3,繰延税金資産の回収可能性の検討

繰越欠損金についても回収可能性の検討を行う必要があります。
①過去(3年)または当期において、重要な税務上の欠損金が生じている。
②過去(3年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
③当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

前回紹介した繰延税金資産の回収可能性とほぼ同じだね
解答
✕1年度
(繰延税金資産)4,000(法人税等調整額)4,000
✕2年度
(法人税等調整額)3,200(繰延税金資産)3,200
解説
(1)✕1年度
繰越欠損金10,000×40%=4,000
(2)✕2年度
繰越欠損控除前課税所得8,000×40%=3,200
純資産直入項目に対する税効果

1,純資産直入項目
PLを通さずに、純資産の部に直入される項目として以下の項目が挙げられる。
・繰延ヘッジ損益

繰延ヘッジ損益(デリバティブ)は金融商品の回で詳しく解説します。
2,純資産直入項目に対する税効果
(1)一時差異の金額
②繰 延 ヘ ッ ジ 損 益:「時価評価による評価差額」
(2)税効果会計の適用方法
上記の差異は会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産また負債の額との間に差異に該当するため一時差異に該当するので、税効果会計の対象となります。
仕訳例
1,その他有価証券
①時価>簿価の場合
(投資有価証券)×××(繰 延 税 金 負 債) ×××
(その他有価証券評価差額金)×××
②時価<簿価の場合
(繰 延 税 金 資 産) ××× (投資有価証券)×××
(その他有価証券評価差額金)×××
評価益⇒繰延税金負債
評価損⇒繰延税金資産

純資産直入項目の税効果会計では基本的に「法人税等調整額」を使いません。
注意しましょう!
2,デリバティブの時価評価
①評価益
(デリバティブ資産)×××(繰延税金負債) ×××
(繰延ヘッジ損益)×××
②評価損
(繰延税金資産) ××× (デリバティブ負債)×××
(繰延ヘッジ損益)×××
解答
①全部純資産直入法
(投資有価証券)400 (繰 延 税 金 負 債) 160 (その他有価証券評価差額金) 240
②部分純資産直入法
(投資有価証券) 800 (繰 延 税 金 負 債) 320
(その他有価証券評価差額金) 480
(投資有価証券評価益) 400(投 資 有 価 証 券) 400
(繰延税金資産) 160 (法人税等調整額) 160
解説
①全部純資産直入法
A株式(2,400-1,600)+B社株式(3,600-4,000)=評価益400
400×40%=160(繰延税金資産)
400-160=240(その他有価証券評価差額)
②部分純資産直入法
評価益
(投資有価証券)800 (繰 延 税 金 負 債) 320
(その他有価証券評価差額金) 480
評価損
(投資有価証券評価損)400(投 資 有 価 証 券) 400
(繰延税金資産) 160(法人税等調整額) 160
部分純資産直入法+評価損⇒投資有価証券評価損を計上⇒(相殺)⇒「法人税等調整額」を計上

純資産直入項目の税効果会計では基本的に「法人税等調整額」を使いませんといいましたが、これは例外です。しっかり押さえましょう。
税効果会計の貸借対照表の表示

(1)個別財務諸表上の表示

繰延税金資産・負債の表示はカンタン!です
ポイントは以下の2点
・繰延税金負債は「固 定 負 債」
ちなみに、繰延税金資産・繰延税金負債は相殺表示します。
つまり、まとめると以下のようになります。
・繰延税金資産<繰延税金負債⇒繰延税金負債を「固 定 負 債」
(2)連結財務諸表上の表示
連結上であったとしても、繰延税金資産・繰延税金負債は相殺表示します。

どゆこと?

同一納税主体というのは同じ会社で発生した繰延税金資産・繰延税金負債ということです。
つまり、親会社の繰延税金資産と子会社の繰延税金負債は相殺できません。
これは親会社と子会社では別の会社として法人税を申告するためです。
まとめ
・繰越欠損金
繰越欠損金発生時
(繰延税金資産)×××(法人税等調整額)×××
将来課税所得発生時
(法人税等調整額)×××(繰延税金資産)×××
・純資産直入項目
・その他有価証券評価差額金
・繰延ヘッジ損益
1,その他有価証券
①時価>簿価の場合
(投資有価証券)×××(繰 延 税 金 負 債)×××
(その他有価証券評価差額金)×××
②時価<簿価の場合
(繰 延 税 金 資 産)××× (投資有価証券)×××
(その他有価証券評価差額金)×××
「その他有価証券評価差額金」を使用する場合は「法人税等調整額」は使用しない。
ただし、
部分純資産直入法+評価損⇒投資有価証券評価損を計上⇒(相殺)⇒「法人税等調整額」を計上
・貸借対照表の表示
個別財務諸表所
・繰延税金資産<繰延税金負債⇒繰延税金負債を「固 定 負 債」
連結財務諸表上
・ただし、相殺表示されるのは同一納税主体に係る税金に限られる。
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