今回からは資産除去債務について解説します。
割引計算が中心になる内容ですが、今まで練習した内容を理解できていれば計算は問題がありません。

ですので、正確な知識を習得するためにもぜひ、最後まで読んでください。
資産除去債務とは?

皆さんは「資産除去債務」をご存じですか?

資産除去債務?聞かないなあ

「資産除去債務」は会計専門用語ですので、なかなかご存じないのではないのでしょうか?
会計基準には以下のように記載されています。
この場合の法律上の義務及びそれに準じるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている。
このほか、有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去する義務も含まれる。
(会計基準第3項(1))
以下、会計基準のページです。参照してください。
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/aro.pdf

難しいね(汗)

字面が難しいですね
簡単にまとめると以下のような内容です。
考え方
- 資産除去債務の考え方
- ✔有形固定資産の除去に関して法令での義務=企業にとって義務⇒負債として扱う
✔法律そのものだけではなく、法律に準じるものも含まれる
✔資産除去債務は例えば以下のようなものが該当します。
・原発の解体
・アスベストの除去
・鉱山等の原状回復
適用範囲
「除去」には売却・廃棄・リサイクル等が含まれますが、転用・用途変更は含まれません。
また、有形固定資産が遊休状態への変更も該当しません。
そのほか、「除去」を対象にしているため有形固定資産の使用中に実施する修復や修繕は含まれません。

この場合は固定資産の減損や引当金の計上で対応します。
上記の内容をフローチャートにまとめると以下のようになります。
会計処理
資産除去債務を割引価値で負債計上し、同額を有形固定資産の帳簿価額に加えます。(両建処理)さらに、減価償却を通じて各気に費用配分を行います。

資産除去債務は固定資産を稼働するのに必要なものであるため、
「付随費用」と同じ性格を有するものとして資産の簿価に加えます。
計算の流れ
①資産除去債務の算定
資産除去債務は有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュフローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定します。
②計上と費用配分
割引価値を負債(資産除去債務)として計上し、同額を対象の有形固定資産の帳簿価額に加えます。資産計上された資産除去債務は通常の減価償却と併せて耐用年数にわたり各期に費用配分を行います。
③調整額の処理
時の経過による資産除去債務の調整額はその時の費用として処理する。当該調整額は期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定します。
チェックポイント
✔有形固定資産の付随費用と考える⇒資産計上⇒減価償却を通じて費用配分
✔有形固定資産の除去費用の法的義務の未払⇒負債計上⇒時の経過による調整額は期首の簿価に割引率をかけて簿価に加算
表示方法

表示方法は以下のようにまとまられます。
①貸借対照表上の表示
②損益計算書上の表示
解答
解説
①資産除去債務の算定
1,000/(1.03)^5≒863
∴機械装置の帳簿価額:1,000+863=10,863
②減価償却の計算
10,863÷5年≒2,173
③時の経過による資産除去債務の増加額
✕1年4月1日:863×3%≒26
④機械装置と資産計上した除去費用の減価償却
簿価10,863-年間減価償却2,173×4年間=2,171
⑤時の経過による資産除去債務の増加額
971(下記の資料参照)×3%≒29
機械装置の除去及び資産除去債務の除去
資産除去債務の額:下記の資料参照
履行差額:貸借差額
計算方法:期首残高+期首残高×利息分(3%)=期末残高
チェックポイント
実際に資産除去の支出額と見積上の資産除去額(資産除去債務)との差額は「履行差額」として処理します。
まとめ
✔有形固定資産の除去費用の法的義務の未払⇒負債計上⇒時の経過による調整額は期首の簿価に割引率をかけて簿価に加算
BS上の表示
PL上の表示
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