これまで連結会計を勉強してきて、支配獲得するのは1回目の取得でした。

しかし、支配獲得までの回数が複数にわたった場合はどうなるのでしょうか?
これを「段階取得」と言います。
今回はこの「段階取得」または「段階取得に係る差益」についてわかりやすく解説します。
今回のポイントは「段階取得に係る差益」=「有価証券の評価差額」です。
支配獲得までの段階取得の処理


段階取得とは?
段階取得とは子会社株式の取得が複数の取引により達成された場合の取得をいいます。





いままで支配獲得は1回で行われていましたが、2回以上の取得で子会社を支配獲得する場合を「段階取得」と言います。
会計処理
・段階取得によって達成された場合は子会社に対する投資の金額は連結財務諸表上、支配獲得日の時価で算定
・支配獲得日の時価と支配獲得するまでの原価の合計との差額は「段階取得に係る差益」として処理。
・原則として特別損益項目に表示



また、保有目的区分を子会社株式に変更することになりますね。
チェックポイント
・子会社に対する投資の金額は支配獲得時の時価で評価
・支配獲得時の時価と原価の差額は「段階取得に係る差益」として処理



例題で確認してみましょう
例題で「段階取得に係る差益」をわかりやすく解説します!
P社は✕1年12月31日現在S社を子会社として支配し、連結財務諸表を作成している。
以下の【資料】を参考にし、✕1年度における個別財務諸表の修正及び連結財務諸表の修正仕訳を示しなさい。なお、会計年度は両社とも暦年である。
【資料】
1,P社のS社株式の取得状況
①✕0年12月31日、S社発行済株式数の10%の株式を5,200円(✕1年12月31日時点の時価は6,000円)で購入した。P社は当該S社株式をその他有価証券として保有している。
②✕1年12月31日、S社発行済株式の50%の株式を30,000円で追加取得し、S社に対する支配権を獲得した。
2,S社の純資産勘定の推移(単位:円)
3,S社の総資産の簿価及び時価は以下のとおりであり、総負債の簿価と時価は一致している。(単位:円)
4,のれんは、発行年度の翌年度から償却期間10年間の定額法で償却する。
5,税効果会計は適用しない。
解答
(個別財務諸表の修正)
(連結財務諸表の修正)
解説
タイムテーブル
(個別財務諸表の修正)
①✕0年12月31日
仕訳なし(S社を支配獲得したのは✕1年12月31日時点なので、この時点ではS社の時価評価はしない)



時価評価するのは支配獲得時です。✕0年12月31日時点では時価評価しません。注意しましょう!!
②✕1年12月31日
諸資産時価83,000-諸負債簿価80,000=3,000
(連結財務諸表の修正)
③支配獲得時の相殺消去
※1 58,000×40%=23,200
※2 36,000-(35,000+5,000+15,000+3,000)×60%=1,200
④✕1年12月31日のS社の支配獲得時の時価の計算
P社は✕1年度時点において10%(✕0年度取得分)+50%(✕1年度取得分)=60%保有しています。
✕0年度取得分を✕1年度時点の時価で評価する必要があります。
✕0年度取得分を✕1年度時点の時価から逆算:36,000×10%÷60%=6,000
✕1年12月31日時点のS社株式の支配獲得時の時価:6,000+30,000=36,000または30,000÷50%×60%
段階取得に係る差益
36,000÷60%×10%ー5,200=800
または、上記で計算した6,000ー5,200=800



つまり「段階取得に係る差益」は子会社株式の支配獲得時の評価差額だね
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